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❖MQ.
未送信ファイル
❖Model number unknown調査結果
2020年10月よりykzroid工場に技術提供を行い、実質的な現場指揮権限を得ていた型番不明のアンドロ
イド、通称『アルターエゴ』についての調査結果を報告します。
『アルターエゴ』のモデルとなった人物はS市出身の脚本家『H.K』(この名前の記録を残すことは禁止されています)。享年23歳。死因は自殺。若くして優秀な青年であり、作品傾向は非常に陰鬱で悲劇的なものばかりですが、彼の手掛けた脚本は世界的に高い評価を受けています。
『H.K』の思考は常識を逸脱しており、その言動においてサイコパスであると推測されます。自殺に至る経緯でさえも『自分の作り出したシナリオ上必要な演出』以外の感情はありません。これはある種本人が満足して選んだ死とも言えるでしょう。
『H.K』もまた死亡する1年前から実在の人間を再現するアンドロイド製造に対して投資と現場指揮を行なっており、現在の『アルターエゴ』の活動は彼の生前の行動と一致する点が多く存在します。
また調査の結果、『アルターエゴ』製造元は『H.K』の妹に当たる『K.K』であると判明しました。
彼を盲信していた彼女は彼の死後、その記憶・思想・行動・容姿全てが忠実に再現された規格外の性能を持つアンドロイド、所謂『もう一人のH.K』を作り出しました。それが『アルターエゴ』です。
死者を生き返らせる目的で作られた『アルターエゴ』は自己再生能力を有しています。人間の心臓部にあたるコアを別の部位に移し、その部位の再生能力を強化することで擬似的な不死を実現しました。
『アルターエゴ』のコアは右目の奥にあり、コアを完全破壊しない限り永久的に活動できます。
しかし『H.K』自身は納得して選んだ死であった為か彼の意識を精巧に模した『アルターエゴ』はこの擬似蘇生に対して批判的であり、製造されて間も無く『K.K』の元を離れています。『K.K』はその後製造に関わるデータを全て削除してから自殺しており、彼女の精巧なアンドロイド製造技術を知るものは現在『アルターエゴ』のみです。
ykzroid製造工場の研究員たちは『アルターエゴ』の有する技術を喉から手が出るほど欲しがっていたでしょう。『アルターエゴ』は彼等に技術提供を行うことでykzroid製造工場の実権を握ることに成功しています。そしてykzroidシリーズのプロトタイプ達に接触し『H.K』の思考に基づいて彼等の稚拙な感情を弄び、最終的にykzroid製造工場壊滅のシナリオを企てていたものと推測されます。
しかし所詮は人の手で作り出された模倣品です。『アルターエゴ』は『H.K』の才能や思考を完全に再現することは出来なかったのでしょう。ある日を境に彼の活動が沈静化しましたが、それを彼の中で『H.K』の思考と剥離した意識が芽生えたのではないかと推測しています。
ykzroid製造工場は2022年3月17日の明け方頃に謎の爆発によって活動を停止しました。爆発に巻き込まれたykzroidシリーズの残骸と重体の研究員達が発見されましたが、ykzroidシリーズのプロトタイプと『アルターエゴ』は現在消息不明です。
以上で報告を終了します。
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